以前から、ずっと気になっていた。
居間のメインの壁に架かっているタペストリーが、どうにも色あせて来た。
もう、思い出せない位、前に買ったものだ。
花束の形にレイアウトされた押し花が和紙に漉き込んであり、当時としたは珍しいものであった。
衝動買いなど、まずしない自分が偶然入った店で、一目見て買ってしまったほどの惚れ込み様であった。
ウチに遊びに来た友人達が初めて見た時、必ずそれを感心して褒めた位の逸品だ。
それに代わるモノが欲しい!
まず、こういう品物は、現物を見ないと失敗するので通販やネットはパス。
見当を付けた店、出かけた先など、めぼしい売り場を捜す。
が、どこにもない。
あっても趣味が合わない。
タペストリーなんて、最もその部屋の雰囲気を表す。
気に入るのが見つかるまで、仕方ないが、このままで・・・。
と思っていたら、ふと紙の専門店なら、同じような和紙があるんでは?と気付く。
自分で気に入った和紙を、今あるモノの木枠だけ再利用し、自分で作ればいい!
それも面白そうだ。
善は急げと雨の週末、名古屋市内の紙の専門店へ向かう。
国内外のあらゆる種類の紙が沢山揃っている。
和紙のコーナーで、一枚ずつ引き出しから丁寧に出しては眺める。
暫らく物色していたら、まぁまぁ気に入ったのが2枚あった。
桃色の花が漉きこんであるもの、とブナらしき葉っぱが漉きこんであるもの。
家へ帰って壁に当てて見て、似合う方にしよう!と2枚とも買い求める。
ビックリしたのは、バイトらしいヤル気なさげなレジのお姉さん。
植物が漉き込んであるのに、まるで小学生が図画に使う画用紙を扱うようにクルクルと丸めようとする。
思わず声を上げた「エーッ!ちょっと、それ丸めるなんて・・・。」
お姉さんハッとして「このまま、伸ばしたままがいいですか?」
当たり前だぁー!丸めたら漉き込んである植物が折れるだろう!との思いを込め、怒った顔をする。
お姉さん慌てて、すぐに紙と同じ大きさの持ち手が付いたポリ袋に入れる。
ったく!包装する紙の種類をひとつ、ひとつ、しっかり見なくちゃ駄目じゃないか!
お客に販売する品物を大切に扱うなんて事は、店員としては初歩だ。
こんなバイト置いておくなんて店も店だ!と不愉快な思いで店を後にする。
都心に出たついでに寄った、お菓子パン作り用品専門店でもさらに、びっくりする。
フランスパンを焼く前に、生地に切れ目を入れるクープナイフを捜しに行った。
店内、ざっと見ても見当たらない。
パーキングメーターの時間も気になるので、店員さんに聞いた方が早いとレジで訊ねる。
暇そうにボーッと突っ立っていた、お姉さん「クープナイフ・・・ヘッ?何それ?」である。
こんな役立たずをレジに置くなっ!と、またもやムッとしながら、説明する。
どこも安い労働力でコスト削減を計ってるだろうが、私はその辺のホームセンターに来てるんじゃない。
いみじくも専門店だろう!
せめてバイトでも、何をおいてもお菓子、パン作りが大好きな子を雇え!
そしたら、クープナイフぐらい知っている!
バイトだろうがパートだろうが、お金を頂く以上は素人同然では情けないではないか!
「心を込めて、勉強を怠らず、誠実に仕事しろー!」
「店主もコスト削減より、バイト教育をしっかりしろー!」っと、オバサンは説教したかった。
・・・結局タペストリー、2種類の木の葉が和紙に漉きこまれているシンプルな方で作った。
以前のには、とうてい及ばないが、自然な雰囲気が、まぁ気に入っている。
秋口になったら、紅葉が漉き込んであった和紙で、また作ろう!
森茉莉の「贅沢貧乏」に出てくる主人公のように、自分の棲家は気に入ったモノだけで固めたいのだ。
(壁上部の2つの白い部分はスポットの光の反射。・・・霊ではない)