夏休みの宿題
次男が通っていた小学校では、夏休みの自由研究を、2学期に入ってから体育館に展示し、生徒始め保護者など一般の方達に、見て頂こうという催しがあった。
私も世間の親と同じく、9月のとある日、張り切って出かけた。
場内にて、きょろきょろして捜す。
たしか彼は、すず虫の観察をしていた筈だ。
見覚えのあるスケッチブックが目に付き、あったあったと手にする。
取りあえず、スケッチブックの表紙に張り付いた、先生からのコメントを読む。
「残念だったね」のひとことのみである。
(?)
最初から、ページを捲ってみる。
夏休みが始まった7月21日、第1ページ目、買って来たすず虫への観察の意気込みと、様子が書いてある。
2日目、3日目と餌をやり、水をやっている様子が書いてある。
そして4ページ目、いきなり日付けが8月20日になっていた。
あれえ?
素早く状況を呑みこんだ私は、それを抱えて、すぐに逃げたくなった。
しゃがみ込んで、拝んでる自分らしい絵の横に、こう書いてあった。
・・・ しらないあいだに、しんでいた・・・。
今日は、次男の20歳の誕生日だ。
彼には、最初から驚かされた。なんせ生まれた時の、体重4300g
なかなか、この重さに太刀打ち出来る、赤ん坊はいるまい。
産まれたほうもほうだが、産んだ私もびっくりである。
見た目も、あきらかに2等身だ。
彼が、高校生の頃だった。保健体育の授業で、新生児のことを勉強している時のこと。
先生が、おもむろに「この中で、生まれた時の体重が4000g以上あった人」
・・・教室は静まり返った。
彼は、話題になるのも、嫌だったし、何より面倒くさいので、黙っていた。
すると先生「やっぱりねえー、4000ある人は、なかなか居ないです。・・・それは・・・」
(それは?) 「巨大児です!」ときた。
(げえーっ!俺って巨大児だったのか!しかも4000ではなく、それより300多いよ!)
心で絶句だ。
16年目の真実発覚である。
それにしても、うっかり手を上げなかった事に、すこぶるホッとした。
しかし、その話を帰ってから、私にしたもんだから、しばらく家庭内での、彼のあだ名は
「巨大児」であった。
彼をみる度、「ヨッ、巨大児」・・・りっぱな、家庭内イジメである。
そういえば、こんなこともあった・・・。
彼が、小学生低学年の頃だった。
昼下がり、家の中でごそごそと片づけしていたら、遠くのほうから、
なにやらジーコジーコと、ものを引きずるような音。
だんだん、我が家に近づいてくる。
子供の笑い声も一緒だ。
そして、その音はピタッと、我が家の玄関先で止まった。
「ハテ?」と思うと、同時に彼の声。
「お母さん、ただいま!いいもの拾った。」
あわてて出てみると、なんとスーパーの、カート・・・。
「お母さん、何か使いん」とニコニコして、言うではないか。
隣で仲良しのT君も、一緒に笑っている。
わっ!こんなん家で何に使うんだ!お店屋さんごっこか?
だいいち、見つかったら大目玉だ。
私はあわてて、もとの場所に返してくるように、指示を出した。
近所のスーパーの駐車場に、転がっていたのが、なにかの弾みで
通学路に出てしまい、それを持って来てしまった、と思われる。
彼とT君は、天心爛漫に笑いながら、また返しに行った。
ジーコジーコと不気味な音が、遠ざかって行った。
現在、彼は某国立大学で、電子工学を勉強している。
もう2等身ではない。
そして、学校帰りにカートを、引きずってくることもない。
夜、お風呂上りついでに、数日前仕込んだりんご酵母を、ふと覗いた。
ちょうど、パワーが出てきたところらしく、シュワシュワと元気に細かい泡をさかんに出していた。
そういえばと、明後日、友達の誕生日なのを思い出す。
でパンを焼き、贈ることにした。
発酵は、低温で時間をかけた方が、おいしいとの事なので、今晩じっくり発酵させることにする。
材料を入れ、捏ね機のスイッチを入れる。
国産小麦なので、捏ねる時間を、やや少なめに設定する。
出来上がった生地を、漬物用の大型タッパーに入れ、第一次発酵開始。
室温10度で様子をみる。
ところが、朝起きてみたらびっくり!まったく膨らんでいないどころか、おだんご状に丸めておいた生地が、だらしなくタッパーの底に広がってるではないか・・・。
えー、どうしちゃったの?と語りかけても、具を載せる前の、お好み焼き状態になった生地は、そんなの私も知らないよとばかりに、ダレた姿をさらけだしているだけである。
やっぱり酵母の力不足か?低温すぎたのか?はたまた材料の配合ミス?
数々の思いあたる原因を探る。
今となっては、温度のみ挽回出来る、対処である。
そこで、コタツに入れることにした。
暫くすると、やっぱり少々膨らむ兆しが見えた。
しかし、2時間を経過した頃から、さして大きさに変化がなくなってきた。
仕方がないので、パンチをして二次発酵に移ることにする。
・・・が、やはり水分も多かったようで、べたついて、うまく形がとれない。
取り合えず、なんとか、なまこ形にして焼く。
ジャーン。なんとも言えない、ぶざまなパンになった。
まるで、鼻緒のとれたぞうりである。
すでに、友達に送るのは中止だ。
こんなの送ったら、受け取り拒否である。
着払いで、返品されるのがおちだ。
出来てしまったものは、自分で処分するしかない!
そんな時、決まって頼りになるのは、夫である。
ランチに登場させたら、「あれあれ・・・」と言ったきり、黙って食べだす。
主食は、それしかないので、それを食べるしかない。
今まで、失敗作を何十回食べて貰ったことだろう。
本当に、はた迷惑である。
この件だけでも、夫には大きな借りがある。
自分でも食べてみる。味は、やっぱり天然酵母の風味がして、悪くはない。
が、食感がぼそぼそだ。おまけにパンチをきちんとやらなかったから、ところどころクレーターのように、大きな穴があいている。
こんなに、とんでもないパンは久しぶりである。
親に、食べ物を粗末にすると罰が当たるよ、と言われて育ったので、食べられる限りは食べる。
まだまだ、修行である。
安定して、おいしいパンが出来るようになった暁には、夫には功労賞を上げよう。
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