天狗倉山 三重県
久しぶりに、じっくり山道を歩いたという思いだった。
2007年、年始め登山に選んだのは、ジャーン!世界遺産登録、熊の古道沿いにある、天狗倉山。
馬越峠ルートの途中にあり、高さは522mである。
冬場に登る山としては、適度な高さである。
まずルート端の海山道の駅に車を置く。
そして熊野古道を歩きながら南下、途中天狗倉山に登って降り、また熊野古道の続きを歩き、尾鷲市に降り立つ。
そこからバスで北上し、駐車していたところに戻る、という計画だ。
期待以上の素晴らしい眺望であった。頂上には、人が何十人も上がれるような大岩があり、
そこからの眺めはまさしく絶景であった。
しかし、それ以上のビューポイントに、案内していただくと云う、幸運に出会った。
お弁当をそこで済ませ、夫と景色の美しさに感嘆してると、隣に座っていた子犬を連れた、
見知らぬお爺さんが、私に向かってこう言った。
「おちょぼ岩からの景色もなかなかだ」
オチョボイワ?
初めて聞くし、ガイドブックにも、見覚えがなかった。
なにより、そのひょうきんな名前に、私は身を乗り出し訊ねた。
「えー、それどこですか?」と聞くとお爺さん、
「よし、いくぞ」と返事も聞くまえから、身辺を片付け始めた。
へっ?!今、初めて会って、旅の友に勝手にしようとしているお爺さん、
ちょっと待ってと夫に目線で、この誘いの成り行きを振る。
夫「そこまで時間は、どれ位ですか?」
「片道1時間」とお爺さん。
時間はなんとかありそうだ。体力もあり余っている。
夫と顔を見合わせ、ともかく行ってみよう、ということになった。
改めてお願いしますである。
とすぐに、歩き出したお爺さん、その速い事、速い事!
まるで、くのいちのように、山道を駆け上がっていく。
お爺さんの愛犬のシュナウザーも、ウサギのごとく後を追う。
普段登るスピードの、5割り増しくらいの速さだ。
年寄りに負けてなるものか、の意地のみ頼りに、後に続く。
そしてついたのが、ジ・オチョボイワ!
まさしく息を呑む美しさであった。
海山の町に、重なるような半島の複雑な地形が絡み合い、青い海と緑の陸地のコントラストが素晴らしい景勝地だ。
なんでも、この場所は、最近発見されて、登山道が整備されたそうな。
知る人ぞ、知るである。
感激して何度も、お爺さんにお礼を言う。
しかし、お爺さんの地元方言まじりの返事は、6割ほど理解出来るのみ、である。
まあ細かいことは良い。
尾鷲市の押し付けがましいが、親切で善良な、いち市民である事は理解できた。
とにかく、ありがとう感謝感謝であった。
本日、弁当を食べた時間を除き、5時間半ぶっ続けで山道を歩いた。
さすがに帰りのバスの中では、疲れが襲ってきた。
されど、心は大満足の山歩きであった。
今までも沢山、絶景を見てきたけれど、全く氷山の一角だと思う。
まだまだ知らない美しい場所が、いっぱいだと思う。
特に日本は四季がはっきりしてるし、何より国土の7割が緑の山という美しい国だ。
同じ場所でも季節毎に、違う顔を見せてくれる。
日本に生まれて、本当によかったな。
そんなことを考えながら、バスに揺られていた。
平成19年1月13日